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理事長挨拶

理事長就任にあたってのご挨拶

こ2023年度日本熱帯医学会理事長に就任いたしました、琉球大学医学研究科細菌学講座の山城哲と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

日本熱帯医学会は、1959年熱帯医学研究会として発足し、今年で設立64年を迎えることとなります。熱帯医学会が扱う学問領域として、設立当初から熱帯環境において発生する感染症の基礎的研究及び臨床疫学的研究ならびに公衆衛生上の諸問題がその中心となりますが、近年は環境・生態学的研究、文化人類学的研究にも広がりを見せております。熱帯地との関わりも、熱帯地特有の疾病を専門とし、熱帯地に研究フィールドを持つ会員が多いのですが、中には専門は別にあるものの熱帯地に興味があるから入会した、とする会員も少なからずおります。このような学際的でおおらかな雰囲気の中で研究者が集い、研究について議論する中で、思わぬケミストリーが生じる学会だと思っております。2022年度に本学会から推薦した研究が、日本医学会総会奨励賞を受賞いたしましたが、新型コロナ感染症診療に従事する医療関係者の感染状況を、日本と中米某国とで比較するという、まさしく本学会の特徴が現れた内容だと思います。

当学会は、学会誌としてTropical Medicine and Health (TMH)を持っております。1973年(昭和48年)に創刊され、2023年1月現在、第51巻が発刊されました。2016年に国際誌としてBioMed Central(BMC)社と提携し、2021には98論文を掲載(アクセプト率28%)致しました。特筆すべきは90%以上が熱帯諸国を中心とする海外からの投稿だった点です。論文ダウンロード数も97万件以上と多くの科学者に支持されております。また、BMC社が発表するCiteScoreが4.2と、ここ数年急速に充実してきております。私も投稿した経験がありますが、レスポンスが早くレビュアーのコメントも真摯で適切な内容でした。我が国唯一の熱帯医学領域の学術誌として、投稿すべき雑誌のリストに加えていただきたいと思います。また本学会は、J-Tropsという学生部会(https://www.j-trops.com/)を持つことも特徴の一つです。会員数が約75人で、専門家を招いての講演会の開催(オンライン)、学術大会での学生セッションの運営、夏合宿(現在はコロナ禍の影響で中止となっている)の企画など、熱帯医学領域に関心を持つ学生が、楽しそうに活動しております。学会としても支援を続けて参りたいと思います。

本学会は、先々代理事長の狩野繁之先生のご尽力により、2017年一般社団法人となり、日本医学会(日本医学会連合)の分科会に名を連ねることとなりました。熱帯医学会の本分を忘れず、会員の先生方の研究活動を支えて行く中で学会としてきらりと光る活動を続けて行きたいと願っております。私が当面の目標とするのは、臨床医学領域、薬学領域、細菌学領域、ウイルス学領域を専門とする会員の数をさらに増やしていくこと、学会を通じて熱帯地域における共同研究の機会を増やしていくこと、学部学生の活動を引き続き支援していくこと、TMH誌の更なる充実です。微力ながら努力して参りたいと思います。会員の皆様の一層のご協力をいただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

理事長就任にあたってのご挨拶

  2023年1月23日

一般社団法人 日本熱帯医学会理事長 山城 哲

過去の理事長挨拶

理事長就任にあたってのご挨拶

この度、2021年度日本熱帯医学会理事長に就任いたしました。つきましては微力ではございますが、熱帯医学の発展の一助たるべく誠心誠意努力に努める所存ですので、何卒、一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。

現在、COVID-19の世界的大流行により皆様の健康のみならず、社会そのものが大きな影響を受けています。医療や経済を含む多くのインフラが脆弱な熱帯地域の諸国では、先進国よりも影響は深刻です。私の研究対象であるマラリアは近年の対策により死亡者数が減少傾向にありましたが、死亡者が最も多いアフリカではCOVID-19による医療崩壊による死亡者数の再増加が懸念されています。他の全ての「熱帯病」も同様です。熱帯医学会には、COVID-19の流行の様相を世界レベルで明らかにする研究、薬剤・ワクチン・診断法などの開発研究、それらの社会実装に向けた活動など、COVID-19の流行終息に向けた活動を展開されている会員が多数所属しています。本学会は、これらの活動を支援することに加え、COVID-19により多大な影響をうけている「熱帯病」に対する多様な活動もより一層支援していきたいと考えています。

また、狩野繁之前理事長の強い指導力の下で、本学会は一般社団法人として新しくスタートを切り、私はその2代目となります。本学会のさらなる飛躍にも尽力する所存ですが、本学会は極めて多様な領域を対象としておりますので、会員の皆様におかれましても、より一層のご協力をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

  2021年1月29日

一般社団法人 日本熱帯医学会理事長 金子修

日本熱帯医学会理事長退任にあたり

第61回日本熱帯医学会大会が、第24回日本渡航医学会学術集会・第35回日本国際保健医療学会学術大会・第5回国際臨床医学会学術集会と合同で、「グローバルヘルス合同大会2020」として、金子明大会長(大阪市立大学教授)他の周到な準備のもと、大盛会に開催され ました。この大会は、コロナ禍においてWebを用いたオンライン大会として開催され、COVID-19感染症への対峙が大きなテーマにもなりました。そもそもCOVID-19は典型的な熱帯病ではなく、突発的な流行発生当時は、私どもの学会が最優先で取り組むべき疾患としてはカテゴライズされませんで した。しかしながら、COVID-19が主に先進国にパンデミックを起こし、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態:Public Health Emergency of International Concern (PHEIC)」となり、熱帯・亜熱帯地域を含む開発途上国をも巻き込むと、間接的にエイズ・結核・マラリア ・NTDsの流行拡大という問題へも発展しました。もはや、熱帯医学者においても、流行地の人々と共にCOVID-19の流行対策を中心に置いて協働せざるを得なくなりました。今年の大会が、他の3学会と共に開催でき、日本熱帯医学会としては大きなチャンスをいただきました。パートナーシップをも って、このPHEICに対峙する必要性を強く認識させてもらえたからです。この記憶に残る合同大会を通して、日本の熱帯医学のグローバルヘルスにおける新たな方途が示されたと思われます。

さて、私は、「グローバルヘルス合同大会2020」での評議員会(社員総会)をもって、日本熱帯医学会理事長を退任いたしました。私の理事長の任期は変則3期6年となり、2009年からの1期3年を足すと、9年も理事長を務めたことになります。十分に時間をいただけたので、学会の難しい諸問題 にも対応させていただくことができました。まずは、1)本学会の学術雑誌Tropical Medicine and Health (TMH)の平山謙二/前編集委員長・橋爪真弘/現編集委員長と共に、TMHのJ-Stageを通したPubmed Centralへの掲載、Springer Nature社へのプラットフォームの変 更とBioMed Central (BMC) ジャーナルとしてのVisibilityの向上を果たしました(2016年)。すでにImpact factor取得の審査も始まっており、近い将来にいわゆるSCI journalとなることを確信しています。そして、2)本学会の一般社団法人化を行うことができました(2017年1月)。 これにより、一般社団法人日本熱帯医学会として社会的責任をもった学術団体としての自由度が高まり、日本医学会(日本医学会連合)の成熟した分科会としても認められました。さらに、3)相川正道賞、女性賞、男女共同参画委員会、史資料委員会、学生部会(J-Trops)などの設立に より、様々な会員の学会活動への積極的参加や会員数の増加も果たすことができました。特に70名を超えるJ-Tropsの学生会員は、Facebookなどを通して活動を広げており、彼らに熱帯医学の明るい未来を感じることができます。様々な変化や改革を支えていただいた会員の皆様に、深く感謝 申し上げます。

次期の理事会は若返りが叶い、金子修理事長(長崎大学熱帯医学研究所教授)を始め、新しい理事の面々からはエネルギッシュな息吹を感じることができます。会員の皆様は、新しい理事を支え、日本熱帯医学会が一丸となって、いわゆるポストコロナの時代における科学を重視した新たな秩序 づくりにご尽力くださいますことをお願い申し上げます。世界の誰一人も取り残されないグローバル化の模索を行いながら、本学会会員の皆様が、熱帯医学の今日および将来の使命を、十全に果たされることをあらためて希望します。

  2020年11月3日

一般社団法人 日本熱帯医学会理事長 狩野繁之

日本熱帯医学会60周年と将来に向けて

第60回日本熱帯医学会大会が、「一歩先への熱帯医学:フィールド、ベンチ、イン・シリコ One Step Ahead in Tropical Medicine: Field, Bench, In-Silico」というテーマを掲げ、 2019年11月8日〜10日に山城哲大会長(琉球大学大学院医学研究科細菌学講座・教授)の周到な準備のもと、大盛会に開催されました。熱帯医学の学際性を強調されたテーマを、日本唯一の亜熱 帯地域の沖縄県で開催する意義を、まさに体温として感じました。思いだせば、第50回の記念大会も、沖縄の同じ会場(沖縄コンベンションセンター)で開催されましたが、すでに10年の星霜が経ったかと感 慨深く思います。この記念すべき2回の大会を通して、日本の熱帯医学の方途が明確に示されたと思われます。第70回大会も、是非また沖縄で開催して欲しいものです。

2020年3月19日に、国立国際医療研究センター研究所(東京)で開催されました定時理事会・評議員会(社員総会)で、一般社団法人日本熱帯医学会の事業年度の変更を伴う定款の改定が 認められました。これにより、本学会の会計年度も10月1日〜翌年の9月30日までとなります。11月1日から大阪大学で開催が予定されています第61回日本熱帯医学会大会(大会長:大阪市立大学、 金子明教授)は、グローバルヘルス合同大会2020の中での学術集会として開催されますが、会期中に、新年度の社員総会を開催し、本年度の会計報告、事業報告などをさせていただきます。そしてこの 時までに、理事の改選を行い、総会では新しい理事長が承認される予定です(私の理事長の任期は、法人化前から足掛け6年となり、満了となります)。

さて現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本国内および世界での流行拡散により、COVID-19の制圧に向けた診断技術、創薬、ワクチンの開発が急がれています。これから主に熱帯地を 中心とする開発途上国への拡散が懸念される季節に突入し、COVID-19医療サービスのUHC(Universal Health Coverage)の達成が、私たちの研究フィールドにおいて喫緊の課題となります。 一方、エイズ・結核・マラリア、NTDsの研究体制や対策支援がトレード・オフされるような状況が生まれてきております。私たち日本熱帯学会の会員は、それぞれの専門性において、バランス感覚よく世界の 健康・医療の促進に関するエビデンスの構築を行い、政策提言への関与も積極的に行ってゆかねばならないでしょう。

そして、いわゆるポストコロナの時代は、科学を重視した新たな秩序づくりに向かうと思われます。世界の誰一人も取り残されない新たなグローバル化の模索を行いながら、本学会会員の皆様が、熱帯医学 の今日および将来の使命を、十全に果たされることを希望します。

  2020年4月1日

一般社団法人 日本熱帯医学会理事長 狩野繁之

日本熱帯医学会が生まれ変わります

第57回日本熱帯医学会大会が、「グローバル化時代の感染症と熱帯医学 Infectious Diseases in the Era of Globalization and Tropical Medicine」というテーマを掲げ、2016年11月5日〜6日に大石和徳大会長(国立感染症研究所)の周到な準備のもと、大盛会に開催されました。一昨年の国内デング熱の流行、エボラ出血熱の西アフリカらの世界的拡散、そして、昨年のMERSの流行やジカ熱の中南米への拡散などの背景を踏まえ、きわめてタイムリーなトピックが満載で、大石大会長のご専門を最大限に活かした特色のある大会になりました。

そして、大会時に開催されました理事会・評議員会・総会で、長く懸案となっていた本学会の一般社団法人化が認められました。日本医学会/日本医学会連合から、その分科会/社員である私ども日本熱帯医学会に、法人化による体制の明確化が求められておりましたが、皆様のご協力により、2017年1月より「一般社団法人日本熱帯医学会」として生まれ変わります。

法人化のメリットとしては、1)学会の社会的信用が得られること、2)各根拠法により本学会組織が明確になり、しっかりとした体制になること、3)会員数の拡大など、団体の活性化につながる可能性があること、4)保有財産が法人名義にできるため明確になり、トラブル防止なることなどがあげられます。さらに、来年の「第58回日本熱帯医学会大会」は、「第32回日本国際保健医療学会学術大会」と「第21回日本渡航医学会学術集会」との3学会合同大会「グローバルヘルス合同大会2017」として開催されますが、パートナーとなる2学会が既に一般社団法人化していて、合同大会開催の会計を透明化し、多くのスポンサーを得て財政的に健全な大会にするためには、私ども日本熱帯医学会の一般社団法人化が絶対的な条件となりました。

生まれ変わる日本熱帯医学会の新たなスタートの年2017年に向けて、学会員の皆様と協力して、総務の執行に努力をしてゆく所存です。本学会の発展がますますありますように!

  2016年12月5日

日本熱帯医学会理事長 狩野繁之

理事長引き継ぎご挨拶

本年(2015年)1月1日付けで、門司和彦前理事長より日本熱帯医学会の総務を、新しい理事の先生方と共に引き継ぎました。門司前理事長におかれましては、3年間にわたる緻密で繊細な同会の運営で、着実な会員数の増加と、学会誌の質の向上を果たしていただきました。特に、長崎大学のスタッフと一丸となってリーダーシップを発揮され、会員の皆様にとって安心な3年間であったと思います。

特に門司理事長の任期中、第53回熱帯医学会大会(2012年・帯広)の五十嵐郁男大会長、第54回同大会(長崎)の平山謙二大会長、そして第55回同大会(国際保健医療学会との合同大会・東京)の遠藤弘良大会長によって、それぞれ記憶に残る大盛会が成し遂げられました。熱帯医学会役員と各大会実行委員の皆様の綿密な連携が生み出した成果であると承知しております。重ねて今、会を代表し、門司前理事長以下皆様の3年間の学会活動に対し、心より感謝申しあげます。

すなわち駅伝にたとえれば、門司前理事長が余力を残し、加速した状態で私に襷を渡される以上、私としても全速力で走り出さねばなりません。まかされた区間を駆け抜けるには、強いご声援をいただかなくてはそれを果たせません。さらに比喩を重ねれば、私は前々区間を巨体を揺さぶって走り、門司先生にやっと襷を渡した記憶もあります。もう一度理事長として走れと皆様に選ばれた以上、今度こそ快走、いや怪走を果たしたいと思っています。

さて現在、エボラウイルス病の世界での流行拡散、デング熱のわが国での再流行など、熱帯医学の喫緊の課題への対応が迫られています。さらに、3大感染症やNTDsへの国民の関心も高まり、日本熱帯医学会は、国際感染症の制圧に向けた創薬、ワクチン開発、診断技術・機器の開発、医療サービスのUHC(Universal Health Coverage)の達成に貢献し、わが国の健康・医療に関する国際展開の促進といった政策への提言も行ってゆかねばなりません。基礎となる寄生虫学・細菌学・ウイルス学領域ばかりでなく、渡航医学、国際保健医療学領域の会員と協働した橋渡しとなる研究の推進が大いに期待されます。さらに研究対象は感染症ばかりでなく、熱帯・亜熱帯地域における疾病構造の変化に従い、生活習慣病対策をも含めたgeneral health promotionへの挑戦を求められています。それどころか、安心・安全な社会の構築への貢献、地域社会の平和への貢献も、熱帯医学の今日的使命であると認識します。

この活動を可能にし、成果を達成して行くために、2つの大きな目標を掲げます。1)日本熱帯医学会雑誌 Tropical Medicine and Health (TMH)のImpact Factorの獲得、2)学会年次大会のさらなる充実、です。前者においては、橋爪TMH編集委員長を中心に、論文の可視化の向上と早期レビューシステムの安定化で、掲載論文の倍増を狙っています。後者においては、まず本年の第56回大会で、阪大の堀井俊宏教授に大会長をお願いしてあります。

日本熱帯医学会の新たなスタートの年を、学会員の皆様と協力して、総務の執行に最大限の努力をしてゆく所存です。今後3年間のご指導・ご鞭撻を心よりお願い申しあげます。

  2015年1月1日

日本熱帯医学会理事長 狩野繁之

理事長引き継ぎご挨拶

2012年1月1日より狩野繁之前理事長のあとを継いで日本熱帯医学会理事長に就任いたしました。微力ながら、熱帯医学の発展に努める所存ですので、なにとぞ、ご支援ご鞭撻をよろしく申しあげます。

1月中に、今後3年間の組織等を固めましたのでご報告致します(以下、敬称略)。

理事長指名理事として、倉根一郎(国立感染症研究所)、神馬征峰(東京大学)、小林富美恵(杏林大学)の3名を指名し、理事16名体制で運営します。

監事は、有吉紅也(長崎大学)、中澤港(群馬大学)が就任します。

常任理事は、山本太郎(庶務・長崎大学)、濱野真二郎(会計・法人化担当・長崎大学)、神馬征峰(編集・東京大学)が担当します。

編集長は、平山謙二(長崎大学)の継続。副編集長・神馬征峰との連携でPubmed Centralに掲載されるようになった学会誌の更なる活性化を図ります。

国際委員会は委員長を小林潤(長崎大学)が継続し、狩野繁之が委員として国際熱帯医学・マラリア学会等との窓口を継続します。

日本医学会は門司和彦が評議員、山本太郎が連絡委員を務めます。

この3年間で以前からの課題であった学会の法人化を検討します。おそらくNPO法人しか選択肢はないと思われますが、本年度から調査を開始します。

法人化の準備としても各理事の担当職務を明確にし、分業制で学会を運営したく、今後、理事会で話を詰めて行きます。例えば、小林富美恵が男女共同参画を担当し、会員、評議員の女性割合の拡大を目指します。

  2012年1月1日

日本熱帯医学会理事長 門司和彦

理事長退任ご挨拶

この度、2011年12月31日をもちまして、早いもので3年間の任期満了を迎え、日本熱帯医学会理事長を退任いたします。在任中は格別のご高配を賜り、衷心より御礼申しあげます。

短い3年間でしたが、いくつかの懸案事項の解決と向上を果たすことができました。まずTropical Medicine and Health編集関係では、平山編集長のご尽力と情熱で、1)2010年科学研究費補助金「研究成果公開促進費」の採択:900,000円、2)JST Journal@rchiveへの掲載採択、そして何よりも3)Pubmed Centralへの掲載採択に至りました。Trop Med Healthの国際誌としての発信能力は飛躍的に上がり、近いうちに当学会雑誌にインパクトファクターが付くことになるでしょう。

第2の懸案であった学会会員の増員に関しては、学会のホームページのデザインの一新や内容の充実を図り、学会案内の3つ折りパンフレット(英文/和文)の作製と頒布などの努力を重ね、結果として3年間で会員数が520人から630人へと増加しました。特に若い研究者の加入が多く、嬉しく思います。

そして、学会としての重大な学術活動である年次大会は、下記の大会長および大会事務局の皆様の献身的なご努力により、毎年大盛会となりました。簡単に書き上げます。

  1. 第50回大会、沖縄、2009.10.22-23. 佐藤良也大会長(琉球大学医学部長)「次世代の熱帯医学を展望する」 創立50周年を記念
  2. 第51回大会、仙台、2010.12.3-4. 賀来満夫大会長(東北大学大学院教授)「熱帯医学におけるさらなるネットワーク構築を目指して」 災害・被爆医療にも言及
  3. 第52回大会、東京、2011.11.4-6. 北 潔大会長(東京大学教授)「世界の動きと日本からの発信」 日本国際保健医療学会との合同大会

その他としまして、

  1. 功労会員制度の創設(23人の功労会員を推挙しました)
  2. 相川正道賞の創設(平成24年度から授賞する予定です)
  3. 国際学会との連携強化(米国熱帯医学会、英国王立熱帯医学会、タイ合同国際熱帯医学会、世界熱帯医学・マラリア会議などとの連携、協賛など)

を理事・評議員の先生方が中心になって企画・運営をいただいております。

2011年の東日本大震災にあっては、当学会の多くの先生方が震災直後よりかかわり、復旧・復興にあたっても、献身的に協働されていることを承知しています。さらには、タイにおける大水害におけるマヒドン大学の活動への義援金でも、きわめて短い期間に100万円を超えるご寄付をいただきました。日本熱帯医学会会員の皆様の国内・国際的な事柄への関心度の高さ、フットワークの良さ、そして人類の幸福へ熱帯医学を通して貢献していこうとする姿勢に強く感銘するとともに、理事長として本学会をたいへん誇りに思いました。

なお、理事長後任には門司和彦教授(大学共同利用機関法人・人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)が就任いたしますので、倍旧のご指導ご鞭撻を賜りますようにお願い申しあげます。 これまで賜りましたご厚情に深謝し、ご挨拶申しあげます。

  2011年12月31日

日本熱帯医学会理事長 狩野繁之

国際保健医療への熱帯医学からの発信

第52回日本熱帯医学会大会が、11月4日〜6日にかけて北潔教授(東京大学大学院)を大会長として開催されました。同大会は、第26回日本国際保健医療学会学術大会との合同大会でしたが、安田講堂を中心とする東京大学本郷キャンパス(延べ12会場)に700名を超える会員が集まる大盛況な大会でした。

日本熱帯医学会からの提案シンポジウム・ワークショップ・セミナーとしての「熱帯医学からの発信(オーガナイザー:濱野真二郎・長崎熱研教授)」「渡航後の感染症(オーガナイザー:大石和徳・阪大微研教授)」「プロバイオティクスによる急性下痢症の予防—インドにおける野外実験(講演:竹田美文・岡山大学大学院教授)」は、それぞれに極めて充実した内容で、参加フロアーの多くの会員から質問が有り、熱心な討議が行われました。各セッションとも、熱帯医学の醍醐味を十分に味わうことが出来た素晴らしい企画とコンテンツであったと、たくさんの会員から賞賛の声をいただきました。

しかし一方において、多くのシンポジウム・一般講演・ポスター発表・自由集会は、数の上でも国際保健医療学会の勢いに押され気味であり、会員の発言・発信能力、学生会員を初めとする若手会員の溌剌さなど、いくつかの局面で熱帯医学(会員)の存在感が埋没していました。国際保健医療学会との合同大会は、第40回、第44回、第47回、第49回、そして今回の大会と数年に一度のペースで開催されてきています。すでに2つの学会のクロストークが流暢に行われる土壌が養われてきたと思われますが、今年の合同大会にあっては、日本熱帯医学会はグローバルヘルスやインターナショナルヘルスと言った世界の潮流にどのように棹さして、その激流に(溺れずに)のって行かねばならないか、今一度考え直す良い機会になったのではないかと思います。

「世界の動きと日本からの発信」というテーマの合同大会を終えて、会員の皆様におかれましては、それぞれのサイエンスを基盤とした熱帯医学の発展に余念がないことと存じます。来年の第53回大会は、五十嵐郁男大会長(帯広畜産大学原虫病研究センター教授)のもと「ワンワールド・ワンヘルス」というテーマで開催されます。人獣共通感染症などが大きなトピックとなるものと予想されます。また来年9月の初めに、帯広で多くの会員の皆様とお目に掛かれることを楽しみにしております。

  2011年11月11日

日本熱帯医学会理事長 狩野繁之

熱帯医学の連携強化で、東日本大震災からの復興に貢献を

3月11日にわが国を襲った東日本大震災で、被災されました地域を中心とする皆様の多くの人命と財産が失われたことに対し、日本熱帯医学会を代表しましてお見舞い、お悔やみを心より申しあげます。また、被災地でさまざまな困難の中にいる本学会会員には、一日も早い研究・教育・診療等の環境が回復されますようにお祈り申しあげます。

偶然にも昨年度の第51回日本熱帯医学会大会は、東北大学の賀来満夫教授に大会長を務めいただき、素晴らしい企画と運営で充実した大会であったことを仙台の街並みに重ねて思い出していますが、その美しい記憶が今、震災の中心にあることに胸張り裂ける思いであります。賀来先生におかれましては、被災地の中にあって感染症の突発的流行の制御に全力を尽くされておられること聞き及んでおります。

第51回大会では、熱帯医学の広く学際的な領域に更なるネットワークを構築して行かなくてはならないことを、参加した会員全員で確認することができました。特に今回の震災による福島第一原発事故を預言したかのように、長崎大学大学院の山下俊一教授に「放射線健康リスク制御を考慮した熱帯医学の新たなパラダイム」のシンポジスト講演をいただき、その他にも、危機管理や国際連携の新パラダイムのセッションは、われわれ熱帯医学の新領域として自覚しなくてはならない広い視野を拓きました。

新しい年度(2011年度)を迎えましたが、この未曾有の震災情況に鑑み、私たちは熱帯医学の研究者として、また医療従事者として、一人ひとり何ができるか、また学会組織として何ができるかを考えてゆかねばならないと思います。特に熱帯医学は、世界の貧しく小さくされている人びとの健康の増進に貢献する学問であることを考えれば、この国難にあって、私たち日本熱帯医学会会員の責務は甚だ大きいと承知しています。

  2011年4月1日

日本熱帯医学会理事長 狩野繁之

わが国の熱帯医学の方途を共に示そう

新しい年2010年を迎えて、すでにひと月が過ぎました。私ども理事も、任期3年の2年目に入りました。本年が、日本熱帯医学会にとって更なる飛躍の年になりますように、理事会を代表して祈念させていただきます。

さて、昨年末よりわが国の科学技術立国としての有りようを揺るがす新政権下での出来事を通じ、私ども学会員が真剣に自分の研究の立ち位置を意識しなくてはならない事態となりました。熱帯医学は、現在の世界的な経済不況の中にあって、短絡的な自国主義や、短期間の費用対効果で測ることが困難な学問領域であることをよく認識し、学問としての意義や価値、その方途を国民や政策指導者にもきちんと説明する能力を我々は備えなくてはなりません。

特に、今回の政府の仕分け対象となった「感染症研究国際ネットワーク推進プログラム」は、日本中の特に大学を中心とする多くの研究者がその関与に共感し、8カ国12カ所の拠点対象研究機関との信頼を醸成して第1期5年を終了したばかりです。結果的に、当初の「廃止」といった乱暴な判断は撤回され、大きな経費削減は無く第2期が始まるようですが、この「科学技術外交のお手本とも言える成果」をあげた研究領域の多くは、熱帯医学の範疇に当てはまるものと考えています。

現在のグローバルな感染症対策研究は、おもにアジア、アフリカ、中南米の開発途上国や熱帯・亜熱帯地域を震源とした感染症の世界的拡散を防ぐために、流行発生国に研究拠点を築き、先進国に移すことのできない病原体や患者を直接的に対象とする研究の進展を、人材育成(現地研究者の育成および自国の若手研究者の育成を含む)を行いながら現地で図ってゆくことが世界のトレンドです。米国NIHも本年より5〜7年をかけたマラリア研究拠点プロジェクトを世界のおよそ8カ国で、単年度各2億円ほどの予算で開始します。オックスフォード大学やロンドンスクール、パスツール研究所なども、長くそのような研究姿勢の中において大きな研究業績を残すとともに、地球上の全ての人びとの幸福に貢献する仕事を蓄積しています。「野口英世記念アフリカ賞」は、わが国がまさにそのような研究業績を残した世界の研究者を表彰するために創設した賞でもあります。

熱帯医学の研究対象は、もちろん感染症だけではありませんが、特に上記のようなフィールドオリエンティッドな研究領域の発展に、日本熱帯医学会は大きな関心を払っていきたいと思います。と同時に、それらの領域で仕事をしている研究者の多くが、我々の日本熱帯医学会へ今後参入くださることを切に希望します。

  2010年2月24日

日本熱帯医学会理事長 狩野繁之

日本熱帯医学会創立50周年を迎えて

早いもので、本年1 月1日付で、竹内勤前理事長より日本熱帯医学会の運営・総務を新しい理事のメンバーとともに引き継ぎ、もう半年が経とうとしています。前理事長のように強いリーダーシップは発揮できませんが、理事・評議員を始めとする学会員の皆様のお力添えをもって、微力ながら日本熱帯医学会の発展に努力している所存でございます。

さて、今年は日本熱帯医学会創立50 周年です。これを記念する年次大会を、熱帯医学の伝統と文化が培われてきた沖縄で開催できることは、日本熱帯医学会の会員にとって大きな喜びであると考えています。今回の第50回大会が、わが国の熱帯医学の歴史を振り返り、先人の輝かしい研究業績を思い出すだけでなく、つぎの50年に向けて新たな熱帯医学の方途を指し示す大会になることを期待しています。佐藤大会長(琉球大学医学部長)を始めとする第50回大会実行委員会では、沖縄の感染症を振り返る大会長講演に始まり、50周年記念座談会、特別講演やシンポジウム、沖縄大会特別企画など、盛りだくさんなプログラムの準備を進めています(詳細は大会ホームページ等をご参照下さい)。本大会が、会員の皆様のたくさんのご参加を得ることで、わが国の新たな熱帯医学の嚆矢となることを祈ってやみません。

世界における熱帯医学のパラダイムは、この50 年で大きくシフトし、「帝国医学からグローバルヘルスへ」、「治療から予防へ」、「感染症から生活習慣病へ」等々と枚挙にいとまがありません。熱帯医学は単なる気候・風土によって定義される医学ではなく、経済・社会にリンクした医学であり、そして何よりも環境や生態系に依存した医学として、現在もっとも世界の関心を集めるべき学問領域です。今こそ、多くの学問領域の皆様に、熱帯医学への参画を期待するところです。沖縄での第50回記念大会の機会も捉えて、日本熱帯医学会会員数の増加にも、是非皆様のご協力をお願い致します。

  2009年6月17日

日本熱帯医学会理事長 狩野繁之

理事長引き継ぎご挨拶

本年1月1日付けで、竹内勤前理事長より日本熱帯医学会の運営・総務を新理事会の先生方と共に受け継ぎました。竹内前理事長におかれましては、6年間にわたりその職を十分に全うされ、特に、わが国の政策医療領域における熱帯医学の重要性を各界にアピールし、日本熱帯医学会の国内外におけるアイデンティティーの確立に力を注がれました。また一方、日本熱帯医学会の会員名簿の整理と財政の健全化にも腐心され、健康的な学会運営の基盤を確立されました。すなわち竹内前理事長には、その強いリーダーシップによって、日本熱帯医学会が今後存分に学問・研究を行うことのできるサイエンスベース、そして社会貢献を果たすべき公益性のある団体としての基盤を作り直していただいたことになります。

このような絶好の条件に恵まれて理事長のバトンを渡された今、私は今後3年間における2つのシンプル且つ大きな目標を皆さんにお伝えしたいと思います。1)機関誌でありますTropical Medicine and HealthのPub Medへの掲載、2)学会員数の(現在550名)の格段の増加、この2点に尽きます。これらは学会としてのサイエンスのレベルを上げるために、今後どうしても必要な条件であり、もちろん前理事長時代から当然のこととして努力されてきたことではありますが、今ここにおいて改めてその決意をお伝えしなければなりません。

前者にあっては、既に昨年までに同機関誌は電子媒体化され、投稿もWeb上で行えるようになるなど、質の向上のための下地はできつつあります。後は、学会員の皆様の投稿をお待ちするばかりですが、積極的なレビューや特集企画を集めて行きたいと思います。商業出版社への校正と頒布の依頼も一つのオプションと考えています。平山謙二長崎熱研所長に編集長続投をお願いし、目標達成に情熱を傾けてくださるとのことです。後者にあっては、会員数の少なくなってきた細菌学・ウイルス学領域の諸先生方の再リクルートの必要性があります。さらには、国際保健医療学、渡航医学、社会経済学、文化人類学、ヘルスセキュリティー領域などの学際的な色合いも強くしてゆくつもりです。わが国の伝統に立脚した特徴ある熱帯医学の発展に向かって、多くの会員の皆様のお力を借りてゆきたいと存じます。

さて、奇しくも今年は、日本熱帯医学会創立50周年です。これを記念すべく、本年度の大会は特別企画を用意して、琉球大学の佐藤良也医学部長に大会長の労をお願いしてあります。まずはこの千載一遇の機会を利用して、上記の2つの目標の達成に突き進んでゆきたいと思っています。

日本熱帯医学会の次の50年に向けたさらなる発展のスタートの年を、学会員皆様と協力して、不惜身命、学会運営業務の執行に努力してゆく所存です。以上、理事長引き継ぎのご挨拶に替えさせていただきます。

  2009年1月5日

日本熱帯医学会理事長 狩野繁之